「シャガールより~NICE SOLEIL FLEURS~」4.22



春の訪れとともに、木々も鮮やかな原宿東郷の杜、
KEISUKE MATSUSHIMA TOKYOにて、シェフ松嶋さんとある食事会を企画しました。




「シャガールより~NICE SOLEIL FLEURS~」



松嶋さんの拠点であるニースを愛した
世界的人気を誇る、マルク・シャガール。

シャガールをテーマとした食事会をやりましょう!ということで、
【NICE SOLEIL FLEURS (ニース 太陽 花)】をインスピレーションの源泉とし、
メニューを考えてもらい、ワインを合わせていきました。

この会はシャガールへのオマージュでもあります。



マルク・シャガールという画家は、1887年ロシア(現ベラルーシ)出身のフランス画家で、パリに赴いた時にマルクを名乗りました。日本にもたくさんの絵が紹介され人気を博していることはご存知の通りかと思います。

シャガールの故郷ヴィテブスクは人口の大部分をユダヤ人が占めていて、シャガール自身もユダヤ人。
第二次大戦のナチスによるユダヤ人迫害の際にはアメリカに亡命、後にフランスに戻るとコート・ダジュールに永住することを決め、ニースでは「聖書のメッセージ」として17点の連作をフランス国家に寄贈。

ニース市にある国立美術館はこれらを展示するために建てられました。最初にパリに来た際は自身がユダヤ系であることを隠していましたが、後期の絵はオリジンに帰って行くべく、パリのオペラ座の天井画も、ランス大聖堂のステンドグラスも、旧約聖書がテーマの絵画となっています。




そんなシャガールという人が生きた時代と、ニースが経験してきた歴史、
「人々の交流」のメッセージを料理とワインに込めて、皆様をお迎えしました。

何故なら、NICE~SOLEIL~FLEURSというこの絵は
フランス政府が観光・交流を目的に、シャガールに依頼して描かれた画だからです。



「春を祝う料理にしたい。ニースで今、出している料理を今回ご用意致しました。」

シェフが一皿一皿の素材や調理法を説明するたびに、
まるで現地の野山や市場の風景が浮かんでくるようです。



アペリティフは「花」のワイン、ヴィオニエです。

ヴィオニエという葡萄の起源は古く、ローマ時代まで遡ります。
当時は鉄道も自動車もありませんので、馬車や河川を利用した交通で、ローヌ川を上って北部の人達と交流していました。リヨン近郊のヴィエンヌの古代のローマ劇場後や、ニームの遺跡などが当時の交易を物語っていますが、今でもローヌ川添いやラングドックの各地にヴィオニエの葡萄畑が残されています。

春に暖かな太陽を浴びて花びらを開く、甘やかなお花の香りが印象的です。




CAVIER D'ESTURGEON BLANC
Velouté de petits pois, sorbet oignon blanc
キャビア グリーンピースのブルーテ 玉ねぎのシャーベット

ニースではシブレットの花を、東京では穂紫蘇を添えて。
素材の組み合わせには、土地の約束と旨味の相乗が込められています。





春を祝う乾杯は、やはりシャンパーニュ。

鮮やかな緑のお皿に花の散らされた一皿目に合わせて、AYのシャンパーニュです。
ランスの大聖堂というのは、クロヴィスの時代から歴代のフランス王が戴冠する場所で、今でも祝福の土地のシンボルです。そこで王たちが愛したワインがAYです。

シャンパーニュに無数にある洞窟のような地下セラーもまた、ワインを熟成させるために掘られたわけではなく、良き石才が採れ、建物が立てやすく素早い移動を可能にする道路の舗装が進み、大市が建つほど栄えたCampagne (カンパーニュ:平野)を語源とする言葉です。どこに向かって道路を舗装したのかというと、やはりローマへと向かう道です。

何故今回の料理とワインの話にローマが出てくるかというと、
プロヴァンスという名は、ローマ時代のプロウィンキア(Provincia、属州)にちなむ言葉だからです。



MORILLES FRAICHE
"Devisement du monde"
Ravioles de champignons de Paris, et son émulsion
モリーユ茸 きのこのラビオリとそのエミュルジョン

この季節に欠かせないモリーユ茸のお皿。



「ニース」のワイン、Bellet.

地中海の葡萄であるヴェルメンティーノ(ロール)を魚料理に合わせること、またアーティチョークのローマ風(対するユダヤ風)という2種を添えた料理が、ユダヤ人であるシャガールへのオマージュです。



DAURADE ROYALE
Rôtie, artichaut épineux à la romaine, émulsion de menthe
鯛のロティ アーティチョークのローマ風 ミントのエミュルジョン



「太陽」のワイン、Bandol

プロヴァンスのワインは全般に太陽を感じることが出来ますが、その原点は地中海から最初に葡萄栽培が伝えられたマルセイユ、トゥーロン近郊のバンドールでしょう。マルセイユとリヨンを結ぶ道は、route de soleil(太陽道路)と呼ばれています。

南フランスの太陽をたくさん浴びる葡萄は、果肉・果汁を守るためにその皮を厚くし、中にタンニンやアントシアニンをたっぷりと蓄えていきます。ムールヴェードルはそれが最大まで高められる品種で長期熟成も可能にしますが、今回は春のミルキーな仔羊ですので、比較的若いヴィンテージのみずみずしさを楽しんでいただきました。






AGNEAU
"Comtes de Provence"
Rôti, légumes de Printemps, jus d'agneau "Navarin"
仔羊のロティ 春野菜 ナバラン風の羊のジュ

ナヴァランもまた、春の仔羊料理のシンボル。
語源はナヴェ(蕪)とラン(丸い)ですから、蕪を添えるのが土地の約束です。

仔羊肉は二つの部位を調理法を変えて楽しませてくれます。




FRAISES EN MILLE-FEUILLES
Coulis d'olives noires confites
苺のミルフィーユ黒オリーブ コンフィ

ニースの裏山には苺と共に様々なハーブが自生しています。
このハーブをミルフィーユ(千の葉っぱ)に見立てています。

松嶋シェフの凄いところは、前の料理とワインの風味をリエゾンさせて、
次のお皿の風味と繋げていくところ。

バンドールの果実味・スパイスの風味から、爽やかに果物とハーブの風味へと
流れていきます。



CROIX DE MARBRE
Biscuit et mousse de pistache, gelée d'orange au safran
Sorbet orange sanguine
記念碑~ピスタチオのムース
サフラン風味のオレンジのジュレ、ブラッドオレンジのソルベ

ニースの本店の前には、1568年からニースの議会を記念する石碑が建てられています。
様々な交流を経て発展してきたニースへの想いを込めている、マーブルの十字を模したデザートです。

外国人である自分だからこそ見えてくるもの。

土地の人達が大切に受け継いでいるものを、料理にしたい。
その言葉に重みがあります。

「僕は単純に食事をする時間を取ってほしいと思っています。

家族でそして友人と、自分で作った食事で、
食事を取り戻すきっかけになってほしいなと思っています。

そして、作った人の人情を感じる食事を通して
友情や愛情を育んでほしいと思っています。

人を良くすると書いて食、人を良くする事と書いて食事、

食事を通して人情、友情、愛情という情けを感じていただき、
批判ばかりする社会で情けをかけない、情けない社会からの脱却をして欲しいなって思っています。

そのためには料理を通しての熱、
ぬくもりを感じる事じゃないかって思っています。」

***


シャガールより、NICE~SOLEIL~FLEURSと題した食事会、

ニース、太陽、花から春の食材や、土地の歩んできた歴史、
日々の営みが文化となって与えられる豊かさを、食を通して共有することで、
皆様の明日への元気にできたなら幸いです。

この日のために積み上げたコルクアート「マルク・シャガール」は、
少しの間レストランに飾っていただいております。








レストランの飾り皿はシャガールの作品です。

本店のあるニースにはシャガールの美術館がありますし、
コートダジュールにはシャガールにゆかりのある街やアート作品がたくさんあります。

シャガールをテーマにしてニースを旅をしても
非常に楽しいかもしれません。